摂南大学 理工学部 電気電子工学科 | |||||||||||||
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2008年度 修士学位論文要旨 「スパッタ深さ方向分析の高分解能化に関する研究」 摂南大学大学院工学研究科 電気電子工学専攻 表面物性工学研究室 井上 公介 |
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近年,半導体デバイスの微細化が進み,ゲート長が 10 nm を切るような CMOS 等が作られるようになってきた。それに伴って, このような微細構造物が設計者の意図したとおりに加工されているかどうかをナノメートルスケールの深さ分解能で評価する技術も 必要となってきている。深さ分析の手法としてはイオンスパッタエッチングにより物質の表面を少しづつ削りながら表面組成分析を 行うスパッタ深さ方向分析が広く行われている。特にオージェ電子分光法を用いる方法はオージェ深さ方向分析と呼ばれており, この深さ分解能を高める工夫が必要とされている。 深さ分解能を決定する要因として,アトミックミキシング(原子混合),表面荒れ,オージェ電子の脱出深さ(情報深さ)の3つが挙げられる。 これらの要因のうち,測定条件の調整により改善することができる可能性があるのはアトミックミキシングと表面荒れである。 本研究ではこの二つの効果を小さくする条件を見つける事を目的として,コンピュータシミュレーションと実験の両面から オージェ深さ方向分析の高分解能化に関する研究を行った。 まず,深さ方向分析のモンテカルロシミュレーションにおいて Ar+,Xe+ による実験結果を 再現するための準備として,投影飛程のシミュレーションを行い,既存のシミュレータである SRIM2006 による計算結果と比較した。 いずれのイオンにおいても SRIM の値より飛程が長くなったが,イオンエネルギーの増加とともに飛程が長くなるという傾向を確認することができた。 また,深さ方向分析のシミュレーションでは低エネルギー領域における実験データの再現ができなかった。これは低エネルギー領域においては As 原子の選択スパッタリングの影響が大きくなるためだと考えられる。これを解決するために,選択スパッタリングの効果を導入できれば 実験データの再現性が高まるものと思われる。 次に本研究で用いたシミュレーションでは導入されていない表面荒れの効果の大きさを確かめるためにイオン誘起二次電子放出実験を行った。 この実験では表面の酸素濃度の変化によるイオン衝撃下での試料表面の形状変化と二次電子のエネルギー分布の関係について調べた。 イオン種として Xe+,He+ を用いて実験を行った結果,二次電子放出に対する二種類の酸素効果が確認された。 一つはスパッタリングによる表面リップル構造の形成(表面形状の効果)で,もう一つは表面の酸化(化学的効果)による二次電子強度の増加である。 また,Xe+ 衝撃下における Si 表面の表面荒れが表面の酸素濃度が高くなる事によって大きくなり,二次電子の エネルギー分布に影響を与えることが確認された。 今後,各種条件(イオン種,イオンビーム電流密度,表面酸素濃度など)でイオン衝撃下での試料表面形状の測定を行い, 表面荒れと二次電子のエネルギー分布の関係が定量的に確認できれば,試料表面形状の動的なモニタリングへの発展につながると思われる。 ![]() 関連論文・発表(下線は発表者)
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