摂南大学 理工学部 電気電子工学科 | |||||||||||||
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2007年度 修士学位論文要旨 「紫外発光ダイオードを用いた脱灰処理モニタの開発」 摂南大学大学院工学研究科 電気電子工学専攻 表面物性工学研究室 石崎雄一 |
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各種生物実験において骨断面の組織標本などを製作する際,あらかじめ Ca(カルシウム)成分を溶出させる脱灰という 前処理を行い組織を軟化させる。現在でも,脱灰の進行状況を確かめるのには脱灰対象試料に直接物理的な接触(針で刺すなど)
を行い確認する手段がとられている。これは脱灰対象を傷つけることが問題で,またリアルタイムでの進行状況が把握できないため 微妙なコントロールが難しく,過度の脱灰で組織を損傷させてしまう恐れもある。そのため標本作製の現場ではより高精度な
脱灰モニタが必要とされている。電気伝導率の測定や溶液の比重からカルシウムイオン(Ca2+)の量をモニタする方法も 考えられるが,脱灰に用いる溶液には酸が用いられるため電極の腐食などによって再現性のある測定は難しいと思われる。 そこで
Ca2+ の吸収波長が超高輝度紫外発光ダイオードのピーク波長に非常に近い事に着目し,脱灰溶液の吸光度から Ca2+ 濃度をモニタすることを発案した。もちろん分光高度計などの装置を使えば可能だが,大掛かりになってしまう。 そこで本研究では脱灰作業の進行状況を非接触でモニタするための安価でコンパクトな特定波長吸光度計を製作し,特性評価を 行う事を目的とした。脱灰モニタの製作に先立ち基礎的なデータを得るため実際に鳥の骨を脱灰し,その処理液の吸収スペクトルの 変化を分光器と分光高度計にて調べた。脱灰液には 10% の蟻酸を使用した。はじめに分光器を用いて紫外 LED を光源とした試料の 透過スペクトルを観測したが,十分な吸収は観測されなかった。そこで分光高度計を用いたスペクトルの変化を見たところ, Ca2+ による吸収は非常にわずかでモニタに用いるには困難であると考えられた。しかし,Ca2+ の吸収波長よりも さらに短い波長でリン酸イオン (HPO4)2- による大きな吸収が同時に観測された。そこでモニタ対象を (HPO4)2- に変更し,得られたデータを基に脱灰モニタ回路の製作に入った。(HPO4)2- に変更した事で 当初予定していた紫外 LED ではスペクトルの範囲から検出が困難だと考えられたので,最新型の 365nm のピーク波長を持つ 紫外 LED へと変更した。本回路は光源と受光センサの両方に紫外 LED を用いるもので受光側はゼロバイアスにてオペアンプを使って検出する。 まずは試作回路を作り特性を調べたが周波数応答特性が悪く,また蛍光灯など外部からの光の影響で S/N が劣化することが分かった。 そこでロックインアンプ法を使い,バックグランドやノイズをカットするよう回路を組んだ。ロックインアンプは同期信号の周波数を 中心とした,非常に狭い帯域のバンドパスフィルタとして働く。このことにより非常にノイズに強い検出器が完成し, 実際に脱灰処理液で測定を行ったところ,分光高度計レベルの高精度なデータが得られた。 実用に向けてはまだ実際に使用される現場での検証などが必要になってくるが,LED を変更することにより,他の吸収波長に 対応させることができれば脱灰以外の問題にも応用でき,可能性は広がると思われる。 ![]() |
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