摂南大学 理工学部 電気電子工学科 | |||||||||||||
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2009年度 修士学位論文要旨 「絶縁体における二次電子収率の精密測定に関する研究」 摂南大学大学院工学研究科 電気電子工学専攻 表面物性工学研究室 有馬 智幸 |
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現在,二次電子を信号とする走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope : SEM)は半導体や金属,有機材料等様々な分野で 使用されており,導電性の物質から非導電性の物質まで幅広く観察されている。そういった中で絶縁物試料の帯電現象が問題になっており, その対策として導電性薄膜のコーティング,数 10 Pa 程度の低真空での観察,一次電子の入射角やエネルギーを調整して安定に観察できる 条件を探す方法などが用いられている。その中で電子ビームのエネルギーを調整する方法を用いる場合には二次電子収率の入射電子エネルギー依存性 δ(E)の データが必要となるが,従来行われてきたような,連続ビームを用いて一次電子ビーム電流に対する二次電子電流の比を測定する方法では試料の 帯電の効果が大きく,信頼性のある測定は難しい。この問題に対して最近,産総研 後藤氏により新しい方式の測定方法(以下後藤方式と略称)が提案された。 後藤方式では試料に~ 1 pC 程度の微少なパルス電荷を照射し,試料から放出される電荷をチャージアンプにより測定する。 このため試料の帯電を最小限に抑えて測定することができる。 本研究では,この後藤方式の実現を目指し,計測に必要な実験装置の製作と特性評価を行った。製作した装置は電子ビームをパルス化するための 制御回路と計測に使用する2つの高精度チャージアンプである。チャージアンプは ~ 1 pC 以下の微少電荷信号を扱うので ノイズを最小限に抑えるために AC100V ラインからの 60 Hz ノイズを避ける意味で電池を電源に用いた。特性を調べると入力電荷量 0.3 pC ~ 5 pC の範囲で 入力電荷量に比例した電圧が出力されており,この範囲で使用可能であることが確認された。 全二次電子数を真の二次電子と背面散乱電子に分離するには,二次電子コレクタの外側電極に 50 V 程度のバイアス電圧を印加する必要がある。 今回製作したコレクタは内側と外側電極の絶縁が十分でなく,バイアス電圧を印加すると~ 1 pA 程度のリーク電流が発生した。これは従来の電流モード の測定ではほとんど問題にならない量であるが,チャージアンプを使った測定ではこのリーク電流が刻一刻と積算されてゆくためバックグランドが 時間と共に増加し,真の二次電子収率 δ(E)の測定はできなかった。そのためバイアス電圧を印加せずに全二次電子収率 σ(E)の測定のみを行った。 電流モードと電荷モードの測定結果はほぼ一致しており,1 pC 程度の一次電子電荷パルスを用いて十分な S/N 比で二次電子収率を測定できることが確認できた。 絶縁物の二次電子収率の測定には至らなかったが,チャージアンプやパルス制御回路を製作し,それらの装置を用い全二次電子収率 σ(E)を 測定できることを実験的に証明することができた。今後の課題として,真の二次電子収率 δ(E)を測定するために絶縁性の良い二次電子コレクタの製作が 必須であり,現在試作・検討中である。 ![]() 関連論文・発表(下線は発表者)
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