摂南大学 理工学部 電気電子工学科

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2012年度 修士学位論文要旨

「自己組織化高分子膜を利用した垂直配向カーボンナノチューブ薄膜の形成」

摂南大学大学院工学研究科 電気電子工学専攻

表面物性工学研究室 岩崎 智志

 これまでテラヘルツ波はその発生と検出がともに難しかったため になかなか産業に利用されていなかった。しかし長短時間フェムト 秒レーザーや半導体デバイス技術など近年の光・ナノ技術の発展に より,技術改革がもたらされ,新しい分野を開拓するものとして現 在注目を集めている。特にテラヘルツ波の発生源として期待されて いる手法の一つにナノスケール間隔の周期的構造物にレーザーを照 射するという方法がある。  本研究では,この周期的構造物として基板に垂直に成長したカー ボンナノチューブ(CNT:Cabon Nano Tube)薄膜の利用を試みる。CNT は金属触媒の上に垂直に成長することがわかっており,金属触媒 ドットを基板表面上に等間隔で配置することでCNTの密度を制御す ることができる。当研究室では2009年度学部卒業生の谷舗氏が金 属メッシュを用いて金属触媒を等間隔に配置することに成功したが 金属メッシュでは数μmが限界で間隔が大きい。テラヘルツ波の 発生源になるにはナノスケール間隔で規則的に成長させる必要があ る。配置間隔をさらに小さくするために,自己組織化現象を利用し た。自己組織化高分子膜は目には見えないような小さな水滴が自然 に配列する現象を利用して作る,空孔がハニカム状に配列した膜で ある。このハニカム膜を用いて金属触媒をナノスケールの間隔で配 置し,ナノスケール間隔での垂直配向カーボンナノチューブ薄膜の 実現を目指した。  まずハニカム膜の生成条件を調べるために,再生利用可能なガラ ス基板で実験を行い,最終的にシリコン基板でCNT薄膜の成膜実験 を行った。空気を水に通して加湿空気を吹きかける実験では空孔が できなかった。高湿度下で加湿空気を吹きかける実験を行った結果 広範囲に空孔ができるようになったが小さい空孔の周りに大きい空 孔ができる結果となった。これは水滴が凝集したためだと考えられ る。金を蒸着したガラス基板に変更して高湿度下で乾燥空気を送る 実験を行った結果,溶液が乾くまで空気を当てることで空孔が規則 的に配列した膜ができた。また溶液を長期間撹拌することでもでき た。  シリコン基板に高分子膜を成膜し,オスミウムコーターで金属触 媒のひとつであるオスミウムを蒸着し,クロロホルムで高分子膜を 除去してからカーボンナノチューブの成膜実験を行った。成膜した シリコン基板をSEM観察すると,SEMの空間分解能が充分でなく カーボンナノチューブを直接観察することはできなかったが元素 マッピングにより空孔部分に炭素が集まっていることがわかった。  従ってこの研究により1)自己組織化膜の空孔部分に金属触媒を配 置することに成功し,2)その金属触媒部分のみにCNT膜を形成する ことに成功したと言える。  今後の課題として,自己組織化高分子膜の空孔サイズやその周期 的配列を再現性よく制御するためのノウハウの蓄積が必要である。

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